技術資料
寿命計算
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見なし寿命(寿命率)
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直線型スライドの見なし寿命(寿命率)“L”とは、特定の条件下において、あるスライドがその初期状態を保持する走行距離とその信頼率を表します。
一般機械工業の場合、初回不具合が発生するまでの走行距離に対する信頼率を約90%とする寿命率“L10”を使用します。
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速度ファクター
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スライドに加わる負荷量と速度の影響は速度ファクター“fs”として下記公式1により算出可能です。
ただし、速度が760mm/分以下の場合は、fs=1となります。
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公式1
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V |
= |
スライド駆動部の速度(mm/分)
(速度が変化する場合は、最大ピーク値を使用して下さい。)
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m |
= |
3(ボールスライド)
10/3(クロスローラースライド)
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温度ファクター
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スライドの温度が一定の数値を超える場合、接触し合う各部品の強度は低下し、その結果スライドの負荷重量にも影響を及ぼします。
そのため、温度ファクター“ft”によって負荷重量を調整する必要があります。
各温度における温度ファクターは表1を参照下さい。
また、多くのスライドに使用されているデルリン製リテーナーは、82℃以上の温度下での使用をお勧めしません。この場合、金属製リテーナーをご使用下さい。
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表1
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温度(℃) |
標準ベアリング:ft |
SUSベアリング:ft |
104 |
1 |
1 |
149 |
0.9 |
1 |
204 |
0.75 |
0.9 |
260 |
不可 |
0.75 |
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負荷種類ファクター
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スライドには駆動負荷、イナーシャー、振動、衝撃、偶発的負荷等が総合的に加わり、完全にスムーズに駆動すると言う事は実際には有得ません。
そのため、負荷種類ファクター“fw”によって負荷重量を調整する必要があります。
負荷種類ファクターは表2を参照下さい。
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表2
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負荷の種類/駆動状態 |
fw |
スムーズな駆動 |
1〜1.5 |
衝撃を伴う駆動 |
2〜3 |
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信頼率ファクター
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信頼率を90%以外(信頼率K%)とする場合は、L10に信頼率ファクター“fr”を掛ける事により算出します。
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Ln = fr x L10
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Ln |
= |
信頼率K%の見なし寿命(寿命率)
(n = 100 - K)
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fr |
= |
表3を参照
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表3
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信頼率:K% |
寿命率:Ln |
信頼率ファクター:fr |
50 |
L50 |
5.00 |
90 |
L10 |
1.00 |
95 |
L5 |
0.62 |
97 |
L3 |
0.44 |
99 |
L1 |
0.21 |
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スライド寿命公式(信頼率ファクター:L10)
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各種ファクター等を基本とし、信頼率ファクター:L10のスライド寿命は下記公式2により算出可能です。
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公式2
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L10 |
= |
信頼率を90%とする走行距離(mm)
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C |
= |
各スライドの負荷重量カタログ値(kg)
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Pc |
= |
スライドが影響を受ける負荷量(kg)
本数値は見なし寿命:L10/250km、fs/ft/fw=1とした場合の数値です。
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m |
= |
3(ボールスライド)
10/3(クロスローラースライド)
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スライド寿命公式(信頼率ファクター:L10以外)
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各種ファクター等を基本とし、信頼率ファクター:L10以外のスライド寿命は下記公式3により算出可能です。
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公式3
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計算例
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ボールスライド:SA2-4を例に挙げ、下記条件下における信頼率95%(L5)の寿命を算出します。
・ピーク速度:V = 3810mm/分
・使用環境温度:66℃
・影響を受ける負荷量:Pc = 9.1kg
・負荷の種類:標準的振動有り、衝撃無し
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1. |
公式1より速度ファクター:fsは、0.58となります。
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2. |
表1より温度ファクター:ftは、1となります。
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3. |
表2より負荷種類ファクター:fwは、1.25とします。
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4. |
表3より信頼率ファクター:frは、0.62となります。
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5. |
SA2-4の負荷重量カタログ値:Cは、27.2kgとなります。
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6. |
上記数値と公式3から本条件下における寿命は下記の通りになります。
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